【感想】ゴールデンカムイ15巻:「良心」月島の闇
皆様こんにちは。赤城です。
『ゴールデンカムイ』15巻の感想を書きました。
※他の巻の感想はページ下部の「関連記事一覧」からご覧いただけます。
※最新18巻の感想はこちらの記事で書いています。
各話感想
気になった場面や台詞をだいたい箇条書きにしてコメントを付けていく形式です。全体を通しての感想・考察は最後の方に書いてあります。前巻までのおさらい
この部分、今まであまり気を付けて読んでいなかったけど適度な雑さが面白いですね。白石の顔が超テキトーなのとかボンボン少尉とか。どんなところにもネタを入れる、ギャグ漫画の鑑だなあ。
特に最初のコマの尾形の表情がツボです。さすがにそんな爽やかな笑顔してなかったよ、アチャと杉元の死を告げたときはw
第141話 樺太アイヌ
- 月島に助けを求める鯉登
困るとすぐ月島に頼るのやめなさいよw
- 杉元
その子はアシリパさんの情報を持っている
エノノカのためではなく、あくまでアシリパさんの情報を得るために助けるという本音が漏れている。実に杉元らしいです。
- エノノカ
ヘンケ!
ここのエノノカちゃん、かわいい。
- プリンッ☆
クッソこんなのでww
- 杉元
ほかに名付けるきっかけ無かったのかい?
絶妙な問いかけに大爆笑しました。こういう、さりげなく笑わせてくるところが好きよ。
第142話 在留ロシア人の村
- 扉絵:地面でバタバタするチカパシ
何やら既視感が。北の大地に住んでるとみんなやってみたくなるものなの、これ?
- 杉元
あの子も小さいのにしっかりしてるなあ…
それに引き換え、チカパシときたら……。
- 酒場でいきなり殴り合い
ワーオ、ハードボイルド! まあ相手が先に胸倉掴んできたからね、正当防衛と言っていいよね(?)。
- 月島に脅し文句を通訳させようとする杉元と鯉登
みんなすぐ月島に頼るんだから、もう! 「宗谷海峡に浮かべる」だの「パヤパヤ頭」だの「三枚おろし」だの訳せっこないだろww月島がごく冷静に「出来ません」と返しているのがまたウケる。
- スチェンカ ナ スチェンク
うわあ、暑苦しい! いよいよ野田先生の趣味フルスロットルって感じだ!
第143話 スチェンカ
- 扉絵:ゴォォオルデェン カァムイィィ
ストリートファイター的なあれでしょうか。元ネタが分かるとすごく楽しそう。
- バカにされてキレる第七師団組
鯉登はともかく谷垣と月島までキレるのは若干意外でした。でも、月島は15巻後半の過去話を読むと意外と好戦的な性格だと分かるので、なるほどな~と思いました。
- いきなり始まる謎のインタビューシーン
これも何か元ネタがあるのだろうか。いったい誰目線なのよw
- 月島
舐めるなよ!
殴り合いでロシア人との間に芽生える友情……! いいね!
第144話 激突!壁デスマッチ
- 扉絵:世紀の対決
これも何か元ネタがあるんだろうけど、分からなくても面白いからもういいです。
- 杉元
あんたもスチェンカやるのかい?
いつになく悪人面な杉元。これが今時のジャンプの主人公か(遠い目)。まあヤンジャンだしね。
- 容赦なくパヤパヤ頭の髪の毛を抜く杉元、刑罰について話す一同
ホント、これが今時のジャンプの主人公と仲間たちか~って感じ。いいぞもっとやれ。
- 岩息舞治の刺青の文字
左、丹、紙、巻、盃、丁。
第145話 ミスター制御不能
- 岩息
コラーッ 私を見ろ!
なんかかわいい。いや明らかにおかしい人なんだけど。かわいい。
- 見物人のじいさん
これこそがスチェンカなのだ
押し寄せる謎の感動。なんだこれ。
- 頭から変な汁が漏れる杉元
やばい。杉元が鶴見みたいになっちゃう!? いやだ~杉元戻ってきて~!!
逃げろ!
からのバーニャ!!
ちょwwww 待って待って何この展開置いてかないでwwwもうすんごいテンポいいし、集中線使いまくりだし、んでなんだよ最後のコマのそのグラビアみたいなポーズはww
バーニャ!!
じゃねえよwww
第146話 ロシア式蒸し風呂バーニャ
- こんな状況でもバーニャについて詳しく解説する岩息
すまん、絵が強烈すぎて全然頭に入ってこない。
- 月島
俺は何をやっているんだ?
ホント何やってんだよ、お前らw
- チカパシを助ける谷垣
かっこいい! けどその、ジュウ~とか言ってるのはあれですよね、足じゃないですよね?
第147話 トドを殺すな
- 殴り合いながらカウンセリングする岩息
岩息さん、変人だけどめっちゃいい人だった。
- 杉元
俺ッ 俺は…役立たず…!
そんなことないよ。杉元はアシリパさんの心の支えになってるし、今だって彼女を取り戻そうと頑張ってるじゃないか。それに寅次だって、故郷に骨を持ち帰ってもらって感謝してるはずだよ。もっと自信を持って!
- 鯉登
月島ァ!
この人、15巻の中で3回も月島に助けを求めてるんですけど。どんだけ月島に頼りきりなの!?
- 尾形
ヴェッ
死ぬほど笑いました。だって無表情で変顔してるんだものww しかも「ヒンナか?」って聞かれてるのに相変わらずなんも答えないし。お前は赤ちゃんとか猫とかなのか。いや~、14巻を読み終えたときは「この一行の旅路を平穏な気持ちで見守れる気がしない」と感じましたが、尾形の変顔があれば何も怖くないですね。
- アシリパ
う"ぇあッ
うわっ、汚っ! 美少女が台無しである。だがそこがいい。尾形が映り込んでるのも面白い。
- アシリパを元気づける白石
白石もめっちゃいい奴ですよねえ。ある意味、杉元よりもアシリパさんの気持ちに寄り添えているかもしれません。
第148話 ルーツ
私のあしながおじいさん
おいやめろww
- ウイルクの村の話
身につまされる思いです。いつだってマイノリティは勝手に色々押し付けられて潰されてしまうんですよね。キロランケとウイルクはそんな状況を打開するためにレジスタンスをやっていたのでしょうか?
- アシリパの頭の中の「カギ」を気にする尾形
ああ~やっぱりそうか、それで14巻ではいきなりあんなふうに距離詰めようとしたんですね(尾形が杉元ポジションを乗っ取ろうとしてる件のことです)。13巻までの距離感考えろよ、怖ぇよwアシリパさんはこの2人が何か企んでいることにはたぶん気づいているでしょう。聡い子ですから。
- 二階堂たちのコント
相変わらず二階堂まわりは楽しい。お箸入れは武器としては微妙ですね。不意を突いて目玉を突き刺すとかに使えるかな。
第149話 いご草
- 月島
自分を制御できなければいつか取り返しのつかないことになる
彼はきっと父親を殺したことを後悔してるんでしょう。そのせいで、巡り巡って鶴見中尉に従わざるをえなくなってしまったから。詳しくは考察の項に書きましたが。
- 月島
鶴見少尉殿は新潟本土のお生まれですからね
えっ、そうなんだ。で、月島は日清戦争の頃からずっと鶴見の部下だったってことか。ふんふん、鶴見がだいぶきな臭くなってきたぞ。
- 月島のロマンスと悲劇
あの生真面目そうな月島軍曹が実は荒くれ者で、素敵な恋人と死に別れていた(?)なんて。月島は以前から私の中で好感度が高かったのですが、ますます応援したくなっちゃいます。
第150話 遺骨
- 月島
九年間ずっと騙していたのか!?
ここの場面、尾形だけわずかに笑ってるんですよねえ。彼もこの頃既に鶴見の計画の片棒を担がされているか、鶴見の計画に気づいていたんでしょうね。それで、「ああ、月島も転がされてんなぁ」とでも思っているのかも。
- わざと月島をかばい、被弾する鶴見
こ、こいつ……笑ってやがる……!
- 月島に橇を譲る杉元
谷垣に続き、月島とも戦場で会っていたのか。ドラマチックですね。
- 「例の計画」に言及する鶴見
ついに尻尾を出したな!やっぱり「第七師団を救済するためにアイヌの金塊を使う」なんて建前で、もっと腹黒い目的があるに違いありません。
- 新しい鶴見の姿を冷ややかに見守る月島
口では忠誠を誓っているのに、心の中では憎んでさえいるかのような表情に見えます。漫画の序盤から結構はっきり描写されていましたが、彼は鯉登や宇佐美とは異なり、鶴見に心酔しているわけではないんですよね。一番忠実な部下なのに。なんとも歪な関係性です。
全体を通しての感想・考察
その他箇条書きでは書ききれなかったことや、ちょっとした考察など。ウホッ! 男の裸だらけの15巻
14巻がシリアスだったのでどうなることかと思っていた15巻。前半はギャグ増し増しでよかった!(笑)野田先生、絶対ムキムキマッチョの裸体を描くのが好きでしょ。特に谷垣は偏愛してますよね。ジュウ~とか効果音つけるなよww
さて、気になったので数えてみました、裸体が載っているページを。その結果は……
68ページ/206ページ(Kindle版) でした!!
なんと、実に33%のページに男の裸体がモリモリと描かれているのです!!!
うん、本当何やってるんだろう私。もう寝よう。
月島が鶴見の腹心になった理由と鶴見の計略
15巻終盤では、月島が鶴見の片腕になった経緯が語られました。しかし、その動機付けとなったいご草ちゃん失踪事件の真相と登場人物の心理が私にとっては非常に分かりづらかったです。そこでこの項では、自分なりに考えた推測を書き出してみます。
いご草ちゃん失踪に対する月島の考え
私は、最終的には月島はいご草ちゃんが亡くなったものと考えている、と思います。根拠は150話でああ……そうですか
と言ったときの月島の表情と、彼が小樽でいご草ちゃんの髪の毛を海中に捨てたことです。
「そうですか」のときの月島は、今までに見たことがなかった一切の希望を絶たれたかのような顔をしていました。いくらなんでも、いご草ちゃんが生きていると思っていたらこんな顔はしないでしょう。
また、いご草ちゃんの髪の毛を海中に捨てたのは、もし彼女が亡くなっていると考えると、一見矛盾した行動のように思えます。だって、髪の毛ってよく遺品として大切にされますからね。
でも、「髪の毛はいご草ちゃんのものではなく、鶴見中尉がテキトーにでっちあげた他人の髪の毛だった」という予想もできます(まあ、月島が恋人の特徴的な髪の毛を取り違えるとは思えませんが)。
さらに、本当にいご草ちゃんのものだったとしても、月島はこの髪の毛を9年の間東京で生きているであろういご草ちゃんを想うよすがとしていたのです。死んでしまった彼女を想うために持ち続けるようなことはないんじゃないでしょうか。もし仮に捨てがたい気持ちがあっても、未練を断ち切り、鶴見に忠誠を尽くすために捨てたものと思います。
いご草ちゃんの行方
しかし、いご草ちゃんが現実にどうなっているかは分かりません。何せ情報が少ないもので。月島の予想通り、亡くなっているかもしれませんし、鶴見の言う通り、本当に生きているかもしれません。ま~鶴見の話は嘘っぽいので、亡くなってる可能性が限りなく高いとは思いますが。月島は彼女を捜しているときに彼女の両親を訪ねてはいなかったのでしょうか? 普通訪ねますよね、いくら仲が悪くても。もし両親の所在が分かれば、少なくともいご草ちゃんが見初められて結婚したという話が嘘か本当か目星が付けられるのに。う~ん、うまいことぼかされている感じがします!
月島が鶴見に従う理由
149話~150話で明確に描かれていると思われるのは、- 月島が唯一愛しいと思っていた相手・いご草ちゃんを失ったと思い込んだ。それゆえ、いご草ちゃんのために生きるという目的を失った。
- 彼に残されたのは鶴見と第七師団だけ。ゆえに、鶴見の計画の忠実な担い手にならざるをえなくなった。
- そして、それらの行動の全てが、鶴見の計算通りであった。
この3点です。
私は以前から、月島は内心では鶴見のやり口に批判的なのに、なぜこれほどまでに鶴見に対して忠誠を尽くすのだろうと思っていました。でも、今回その理由がはっきりしました。
故郷では忌み嫌われていた月島。いご草ちゃんを失った彼に残されたのは、死刑から救ってくれ、また砲弾からかばってくれた上官・鶴見と、9年間苦楽を共にした第七師団の仲間たちだけだったのです。そしてその仲間の多くは満州の土の下に眠っていて、月島が鶴見とともに守ってやらなければ、いつかは忘れ去られてしまう運命にあります。
だから、月島はどんなに自分の良心がうずいても、鶴見に従い続けるつもりでいるのでしょう。
鶴見中尉……おそろしい子ッ!
これまでも戦争特需で儲けようとしたり尾形に父親を殺させたりする場面があり、絶対に腹に一物あるだろうと思っていた鶴見ですが、15巻でその印象はさらに強固になりました。加えて、その人身掌握術を目の当たりにして、非常に恐ろしい人だとも感じました。9年も前から、優秀な兵士である月島を自分の忠実な駒にするためにあれこれ手を回していたとは。
いご草ちゃんを殺してまではいないと信じたいです。監獄で月島の話を聞いてから初めて佐渡に行ったような描写もありましたから。
でも、少なくともいご草ちゃんの失踪事件を利用して月島の心を操っているし、月島の気持ちを惹きつけるために、わざと彼をかばって顔面を損傷することさえ厭いませんでした。
あの佐渡出身の兵士も、鶴見がいご草ちゃんの死を隠していると露骨に信じさせて、彼を絶望させるためのサクラなのではないでしょうか。
月島はおそらく、鶴見が月島を掌中に収めるために色々手を回していたことには気づいているでしょう。でなければ、150話のラストであんな憎しみのこもった目をする理由がないですから。でも、もはや彼には抗う気力が残っていないのかもしれません。
以上の通り、いご草ちゃん失踪事件の真相はまだ闇の中ですが、月島は他の登場人物に負けず劣らず、複雑な背景を持った人物だと分かりました。また、鶴見がまっくろくろすけであることも判明しました。
月島には、杉元やアシリパさんたちと交流することで、何かしら救済されてほしいものです。
感想は以上です! 最後までお読みくださりありがとうございました。
16巻の感想はこちらの記事に書きました。
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※この文章は、赤城みみる(Twitter ID i14wander、はてなブログID i14wander)により執筆され、赤城みみるの所有するブログ「星を匿す雲」(http://cqs4live.hateblo.jp/)(http://cqs4live.hateblo.jp/archive)に掲載されているものです。著作権法32条で定められた要件を満たさず行われる転載は、著作権法21条に違反します。
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