星を匿す雲

主にTVゲーム、漫画、小説、史跡巡りの感想を書いているブログです。基本的に【ネタバレあり】ですのでご注意ください。

【感想】ゴールデンカムイ18巻

皆様こんにちは。赤城です。

ゴールデンカムイ』18巻の感想書きました。

※他の巻の感想はページ下部の「関連記事一覧」からご覧いただけます。




各話感想

気になった場面や台詞をだいたい箇条書きにしてコメントを付けていく形式です。全体を通しての感想は最後の方に書いてあります。



第171話 樺太アイヌの刑罰

  • アシパは漢字を知らない
    刺青人皮の暗号は漢字の読めないアシパさんでも分かるように作ってある、ということでしょうか。杉元が気づいたと言っているのもそれ?


  • 殺人犯のマキリに鞘をつけるチカパシ
    チカパシは何気にいつもいい活躍します。


  • イトイウリ
    目を潰して棺に閉じ込めて生き埋めにするって、現代日本人な私から見るとただ殺されるよりも残酷な気がしますが、文化の違いってやつでしょう。そしてこれが土方たちの場面への導入にもなっているんですね。



第172話 阿寒湖のほとりで

  • 舞台は阿寒湖
    ついに出ました、阿寒湖! 去年行ってきたので嬉しいです。


  • 関谷輪一郎
    またヤベェのが出てきやがった。親分さん懐かしい。


  • 門倉無駄に尻の穴を見ちまったぜ
    ちょっとかっこいいっぽい構図で言ってんじゃねーよw


  • 門倉妖怪みたいなおじいちゃん見なかったか?
    尊敬してるはずなのに何気に認識がひどい(褒め言葉)。


  • 土方のことをちらつかせたら牛山は毒を飲んだと言う関谷
    牛山ならさんざんためらった末に従いそうだなあとか思ってたけど真相は……。土方は牛山をわずかに案じてはいますが、それよりも関谷の「運を呼び込む」という言い分が気に入ったようですね。


  • 門倉この事件は 迷宮入りだ!!
    だからちょっとかっこいいっぽい構図で言ってんじゃねーよ! 門倉語録の更新が止まらないッ!!


  • ワカサギが残らず釣り穴へダイブ
    一列ずつお行儀よく釣り穴(湯壷?)へ突っ込んでいくワカサギたち。シュールすぎワロタ。関谷の決め台詞が台無しである。


  • 凶運の持ち主 門倉元看守部長
    ここにきてにわかに強烈な個性を打ち出してきた門倉元看守部長の今後の活躍に期待しましょう。野焼きで自分ちだけ全焼は笑いました。



第173話 僕の怪人

  • 子供ほら~ マリモ食えよぉ
    阿寒湖名物マリモの出し方ヒデェww

    ちなみに阿寒湖のお土産屋にはまりもプリンというのがありました。

    ミドリムシユーグレナ)的なアレかと思いきや普通のプリンでした。抹茶で着色するくらいはしてほしかったよね。


  • 怪人オベンチョ爆誕
    おべんちょって……おべんちょって何……!? 全てがツッコミなしで進んでいくこの感じ、最高です。


  • オベンチョミイィ…マァァ~
    それ、鳴き声!? 鳴き声なの!?


  • チヨタロウこいつは…まさに兵器だ!! 葬らないと
    ゴールデンカムイはいつの間にホラー物になったんだろうか。



第174話 湖の中心で突っ走る

  • 門倉もう走れないッ 苦しい…先に俺が死んじゃう
    扉絵でさんざんかっこつけておいてこれである。


  • チヨタロウ僕が…殺るんだ!!
    だからなんのホラーやねん。背後で意味不明な鳴き声を上げながらスケートで遊んでいる牛山との対比が笑えます。


  • キラウどこに隠すんだ?x2からのマキリを尻の間に隠す門倉
    たぶんあとでキラウにブチギレられる。


  • 怪人オベンチョとの別れ
    ありがちな怪物と人間の少年の悲しき友情物語になってて可笑しい。牛山のスピンすごいですね。



第175話 繭

  • 毒を「精力剤」と騙されて飲んだ牛島
    土方を人質に取ったと脅されたわけじゃなかったんかーい!


  • 門倉謎は深まった!!
    オッサンもうかっこつけんなw


  • 門倉名探偵門倉を舐めんじゃねえ
    意識してやってたのかよ。

    江戸時代までの日本にはいわゆる「探偵小説」のジャンルは存在していませんでしたが、開国に伴い西洋から輸入され、徐々に発展していったようです。例えばシャーロック・ホームズなどは1894年には翻案(登場人物や舞台を日本人風に変える)という形で雑誌に紹介されているそうです。……と、Wikipedia先生がおっしゃっています。ですので、門倉が知っていても不思議ではありませんね。そういうの好きそうだし。


  • 種繭雌雄鑑別器で毒薬ルーレット
    かなり無理矢理感があるw 野田先生の北海道名物を何がなんでもねじ込もうとする姿勢が私は大好きです。


  • 関谷の過去
    珍しく情状酌量の余地のある過去ですね。

    関谷は敬虔なキリスト教徒だったが、突然の落雷で最愛の娘を失い、神の存在に疑問を抱いた。自分を罰する=殺す者がいつか現れれば、神の存在を証明できるという歪んだ思想を持つに至った、というところでしょうか。


  • 拮抗作用で毒を無効化した土方と門倉
    トリカブト保険金殺人事件(フグ毒=テトロドトキシントリカブトの毒=アコニチンの効果を遅らせてアリバイを作った)から着想を得たんでしょうか。

    拮抗作用で毒の無効化まで可能かはちょっと疑問なんですけど、まあお話ですしそういうこともあるんだろうということにしておきましょう。そもそも主人公の杉元の自然治癒力が人知を超えてるからな。



第176話 それぞれの神様

  • 神の存在を信じて息を引き取る関谷
    死に顔は壮絶だけど最後に満たされたまま逝けたようです。思えば、刺青の囚人たちはなんだかんだ言ってもほとんどの人が自分で納得できる死に方ができてるんですよね。ダメだったのは名前の分からない囚人と鈴川くらいじゃないかな。


  • トナカイの首輪をチラ見する月島
    鯉登に対する安定した扱いの雑さを見せる月島軍曹。いいぞもっとやれ。



第177話 長谷川写真館

  • キロランケとソフィアのカタコト日本語による言い争い
    語彙が足りないとはいえ内容が低レベルすぎてワロタ。ソフィア小学生かよw


  • ソフィアは日本語に興味がない
    ロシアの国家としての在り方を変えるのがソフィアの目的なわけで、ウイルクたちみたいに日本に行きたいわけじゃないんですよね。


  • 日本の諺を自在に使いこなすウイルク
    ホントどこで覚えてくるんだそういうの。


  • キロランケロシア貴族や知識人層の一部が(中略)啓蒙活動していた
    今更気づいたけどソフィアってナロードニキだったんですね。彼らの運動自体は失敗に終わったものの、その後のロシア革命につながる素地を作ったらしいです。


  • 指名手配の紙を眺める長谷川
    長谷川に密告される展開になる、かと思いきや、衝撃の結果が待っていたのでした。



第178話 革命家

  • オフラーナ
    日本の特高みたいなものでしょうかね。


  • オフラーナ我々は日本人を捕まえに来た
    ナ、ナンダッテー!? 長谷川は一般人のくせに観察眼がすごいと思ってたら、日本のスパイだったのか。


  • ウイルクの使命手配書を見つけたフィーナ
    も、戻っちゃダメだあぁぁ!


  • 銃弾を背中に受けて倒れているフィーナ
    結局誰が彼女を撃ったかはっきり判りませんでした。しかし、もしオフラーナと戦っていたのが長谷川だけだったとしたら、おそらく服装で見分けがつけられたはず。そもそも戦闘にも至らなかったかもしれません。



第179話 間宮海峡

  • 動揺するソフィアとキロランケ、冷静なウイルク
    ウイルクが顔色一つ変えないのがめちゃくちゃ怖い。皇帝暗殺したときも真顔だったもんなあこの人。人の情はあるけど、滅多なことでは動揺しないのかも。


  • 早く行けと諭す長谷川
    長谷川には赦しの言葉を与える余裕はなかったんでしょうね。ソフィアたちを恨む気持ちと、自分自身の判断の甘さを悔いる気持ちと、おそらくもっと大きなものに対する憎しみでいっぱいになっていたんだろうと思います。


  • キロランケ北へ行ってどうスル?
    ん? ここ、わざわざ日本語で喋ってるのでしょうか? なぜでしょう。ちょっと分かりません。


  • タタール海峡
    樺太ユーラシア大陸の間の海峡のこと。日本のみ、間宮海峡と呼ぶそうです。


  • ロシア政府から漏れてきた「ある情報」
    アイヌの金塊の情報かな?


  • キロランケ俺たちのカムイが違うものにすり替わっていく
    至言ですね。


  • 長谷川=鶴見篤四郎
    ナナナ、ナンダッテー!?!? ついに謎に包まれていた鶴見中尉の過去が明らかになりました。まさか過去にウイルクたちと因縁があったとは……いくつか気になることがありますが後ろでまとめて書こうと思います。



第180話 亜港脱獄

  • キロランケあの人に会えばきっとお前は何か思い出す…
    う~ん、「アシパはソフィアと会って話せば何か思い出すに違いない」とキロランケは前々から言い続けていますが、どういう根拠なのでしょうね? ウイルクとの付き合いはキロランケの方が長いはずですから、ウイルクの性格や思考パターンはキロランケの方がよく知っているはずです。

    考えられるとすれば、ウイルクとソフィアが恋仲だったから、彼女にしか伝えていない情報がある、とかでしょうか?


  • 爆薬が爆発しない
    保存状態が良くなかったか? などとわざわざキロランケに言わせているということは、たぶん保存状態の問題じゃないのでしょうね。もしかして、襲撃は読まれていた?

    まさか尾形がキロランケを裏切ってロシア側について情報を流したとか? まさかなあ……尾形にはロシア側との接点がないし、こないだ狙撃手たちを殺したばかりだから、ちょっと考えづらいです。

    あるいは、いつもソフィアの傍らにいたスヴェトラーナが実はオフラーナで、ソフィアが受け取った手紙の内容を全てロシア政府(?)に流していたのか? 目的はソフィアを泳がせてキロランケと接触したところを捕まえるため? キロランケたちが国境の狙撃手たちを討ち果たしたことはロシア側もなんらかの手段で把握できるでしょうから、キロランケとソフィアの繋がりを考えれば、彼らが亜港に来ることも予想できたでしょう。


  • 怪しげな穴から猛獣がコンニチハ
    たぶんアムールトラ
    P.t.altaica Tomak Male

    この穴は爆薬を爆発しないようにしたのと同一犯が仕掛けたと思われます。でもなぜわざわざ猛獣を放ったのかは謎。




全体を通しての感想

全体的な感想と考察です。



門倉元看守部長が最高に輝いていた

前半はまさに門倉のターン。門倉が本作のカッコ悪いおじさん代表格(誉め言葉)であることをじっくりと知らしめる展開でした。

正直、網走監獄編のときは「ちょっと抜けてるけどやるときはやるおじさん」というイメージしかなかったので、今回「やるときはやるけどことごとく失敗するおじさん(でも最終的にはなんかうまくいく)」であることが判明して楽しかったです。


この調子でキラウの掘り下げにも期待しています。私、おじさんキャラ大好きなので。



鶴見とウイルク、キロランケの因縁

一方、後半は前巻から引き続き、ウイルクとキロランケの過去を辿るシリアスパートでした。そしてまさかの鶴見中尉とウイルクたちの因縁が明らかになりました。

以下、気になったことについて簡単に述べます。


鶴見はウイルク=のっぺらぼうであると認識していたか、認識していたならいつからか

鶴見はキロランケの情報をロシア側に流していました(第160話より)。このことから、アイヌのキロランケ=皇帝殺害犯ユルバルスであることはいずれかの段階で把握したと思われますが、ウイルクのことはどうだったのでしょうか。

ウイルクが言った、ロシア政府から漏れてきた「ある情報」は、スパイとして活動していた鶴見が同じ時期に手に入れていても不思議ではありません。それがもしアイヌの金塊のことだったとすれば、キロランケとウイルクの正体を知った際、あるいはその後のどこかのタイミングで、鶴見はなぜ彼らが自分から日本語を学んでいたかについて考えを巡らせたかもしれません。そして彼らの目的を悟り、情報網を駆使して、彼らの北海道での動向を監視していたかもしれません。

この仮定が正しければ、鶴見はかなり早い段階からキロランケとウイルクの正体を知っていたことになります。

ちなみにキロランケの方からは、「長谷川さんとはそれきりだ」と言っていることから、長谷川=鶴見であるとは認識していないものと思われます。いつ裏切るか分からない尾形の手前、嘘をついているのでなければ。

ウイルクはこれまでの情報だけではどちらとも取れません。しかしもしかしたら、ウイルクは北海道でアイヌとして暮らしている間に鶴見中尉と接触していた可能性もありますね。


アイヌ殺害事件との関わり

鶴見はなぜかアイヌ殺害事件の現場の遺留品を所持しています(第116話より)。どうしてそうなったのかはよく分かりません。現場検証の係とかだったのかもしれませんが、その遺留品を使ってインカラマッがキロランケを追うよう仕向けたことを考えると、現場検証の係的な何かになったのは偶然ではないでしょう。なんらかの関わりがあるものと推察されます。具体的には、

  1. アイヌ殺害事件の真犯人もしくは共犯者
  2. なんらかの手段で犯人を操っていたか事件を静観していた
  3. 事件後に詳細を知り、利用することを考え付いた

のどれかではないかと思います。ただし金塊の在りかは知らないようなので、ウイルクと手を組んでいたとしても土壇場で裏切られたのでしょう。


のっぺらぼうはなぜ「のっぺらぼう」なのか
アイヌ殺害事件では、のっぺらぼう、つまり、ウイルクが罪を着せられました。ウイルクは支笏湖まで逃げ、のっぺらぼうの状態で網走監獄に収監されました。私が見逃しているだけなら申し訳ないのですが、ウイルクがいつ、なぜ「のっぺらぼう」になったかは、まだ明かされていませんでしたよね。

まさか、他人を怖がらせるとか、読者をミスリードするとかいう目的でのっぺらぼうになったわけではないでしょう。ウイルクほど身体能力や判断力に優れている人が不慮の事故に遭うのも考えづらいです。

おそらく、「特定の人物」にウイルクの正体を悟られないために、ウイルク自身もしくは「他の誰か」が意図的に彼の顔を失わせたものと考えられます。

ここで、「特定の人物」が鶴見だとすると、上記の鶴見のアイヌ殺害事件への関与パターンのうち1は除外されることになります。2、3はありえます、鶴見にはモロバレしてそうですが。

もし「他の誰か」が鶴見だとしたら、関与パターンは当然1か2ですが、「特定の人物」が誰なのか全く分からなくなります。

いずれにせよ、私はウイルクがのっぺらぼうになったことは鶴見と絶対に関係があると思います。


鶴見が金塊を欲しがる真の目的とは?

鶴見はかねてから、「日露戦争で被害をこうむった兵士と遺族たちを救済するために北海道に軍事政権を打ち立てる。そのために金塊を使う」などとうそぶいていました。しかし、日露戦争前から何やら怪しげな動きを見せていることと、今回のスパイとしての過去から、日露戦争云々は明らかに味方集めのための建前であることが伺えます。もしかしたら本気で実現するつもりかもしれませんが、それが全てではないでしょう。

フィーナと赤ん坊のことは、描写を見る限りでは本気で愛していたようですから、日本とロシアの対立の煽りを食って彼らを失ったことが彼の目的の核となっているのだと思います。彼をその対立の狭間に立たせた日本、あるいは敵国であるロシアを打ち倒したいか、社会の在り方を変えたい、といったところでしょうか。

ちなみに、フィーナと赤ん坊の死に直接関与したウイルクたちに復讐するために動いているとは考えづらいです。明確な根拠は思いつきませんが、なんていうか性格的にそうはならんだろうと。もちろんある程度恨んではいるでしょうけど、スパイをやっていたら家族が犠牲になることは日頃から覚悟していたと思うし、ロシア政府から追われて隠れている彼らに対してはむしろ仲間意識を持ったかもしれません。








感想は以上です! 最後までお読みくださりありがとうございました。19巻を楽しみにしています。

1~4巻、14~17巻の感想も書いています。以下の「関連記事一覧」よりご覧ください。








※この文章は、赤城みみる(Twitter ID i14wander、はてなブログID i14wander)により執筆され、赤城みみるの所有するブログ「星を匿す雲」(http://cqs4live.hateblo.jp/)(http://cqs4live.hateblo.jp/archive)に掲載されているものです。著作権法32条で定められた要件を満たさず行われる転載は、著作権法21条に違反します。




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