星を匿す雲

主にTVゲーム、漫画、小説、史跡巡りの感想を書いているブログです。基本的に【ネタバレあり】ですのでご注意ください。

【感想】下天の華:織田兄弟はいいぞ

こんにちは。赤城です。
『下天の華 with 夢灯り 愛蔵版』本編の攻略キャラについて、頑張って感想を書きました。ネタバレありです。

キャラの感想とルートの感想と自分の妄想がごちゃ混ぜになっているような感じですが、どうか平にご容赦ください。

結論から言うと、織田兄弟はいいぞ

ちなみに私は森蘭丸織田信行羽柴秀吉徳川家康明智光秀織田信長→百地尚光の順で攻略しました。
が、総評の方で申し上げたように、織田信行は一番最後の攻略を推奨します。

いやしかし、これすごい字面だな。城でも攻め落としたのか?



※総評はこちら




森蘭丸

一番とっつきやすかったので選びました。


想像通り初々しい感じでしたね。「これよくあるやつー!」が特に多かったルートでした。あと、おぉ、忠犬だなぁって思った(笑)。

罪の華ルートがすごく怖かったです。ゲームで登場人物からこんなに憎しみを向けられたのは初めてでどうしたらいいか分かりませんでした。あと蘭丸だけ主人公殺害エンドなんですね。
まあ立場上それしかないのでしょうけれども、自分がお咎めを受けることになろうとも愛する人だから自分の手で殺して苦痛を終わらせてあげたいという考えに狂気を感じました。
純粋な愛情は激しい狂気にも変わりうるのだということを実感したルートでした。




織田信行

私はこの人のルートが一番好きです。なので他のキャラとは全くテキスト量が違いますがご了承ください。


一見爽やかな好青年と思いきや実の兄の殺害を企む裏切り者だった信行。他のルートでは散々な扱いをされています。でも攻略キャラクターになっているということはこの人にもそれなりの事情があるのかな、と気になって蘭丸の次に攻略してみました。

やっぱりすごい事情があったよ。というかめっちゃ共感できるわこの人

繊細で争いごとを好まない性格は戦国大名の息子としては認められず。
常に「天才」である信長と比べられ、一瞬持ち上げられて当主になりかけるもすぐに梯子を外されてひとりぼっちになる。
良いところがたくさんあるのに、信長のキャラが濃すぎて誰も気づかない(あるいは価値があるとみなされない)。
本人も全てが信長に劣っていると思い込み強烈な劣等感を抱く。
時は過ぎ、信長は今や天下人目前。信行は自分を裏切った家臣どもに混じって、信長を支えなければならない。
地獄か。こんな状況に置かれたら誰だって病むわ。「風」が吹きすさぶのも無理はないわ。そこで信行は「風」を抑えるために、冷酷非情な性格を演じ、己の心を切り刻みながら信長暗殺計画を進めることになったんですよね。
個人的な話で申し訳ないですが、私は生来劣等感が強く、しかも周りは優秀な人ばかりだったので、信行のような状態になったことも数知れず。したがって信行に非常に感情移入してしまいました。

最終的に主人公が全力で戦って信行を浮き世のしがらみから遠ざけてくれたときは心の中で拍手喝采しました。ほたるさんあんた漢の中の漢だぜ……!
ひいき目でしかありませんけど、ほたるちゃんはこのルートが一番輝いていると思います。彼女の情け深い気性、徹底的に相手に寄り添える才能を存分に発揮していますから。
しかも師匠ルートによると、師匠は親を失って泣きじゃくっている信行が「甘ったれ」な主人公の姿と重なって思わず助けたとのこと。よく似た2人がともに百地に助けられ惹かれ合う、もはやソウルメイトじゃないですか。

一方で、信行は師匠が助けてくれなければ史実通りに死んでいたはずというのが実に切ないです。
そして信行ルートだと主人公によって救済されるから、歴史改変されてよかったね信行! って祝福できますが、信行の内面を知った後で他のルートをやるのはきつい。跡目争いの時に死んでしまった方が幸せだったんじゃないかと感じてしまって……。あれでは近いうちに自害してしまうのではないでしょうか。
信長や師匠のルートでは2人が信行を思いやるシーンや信行の心情が垣間見えるシーンがあったりしてちょっと嬉しかったけど。


罪の華エンドは救いがないですがすごく良いですね。
戦国の世にはそぐわない「甘ったれ」な2人が、あえてその心を凍らせて、戦国の世の理に従い信長を追い詰めていく。胸の痛みを癒せるのはお互いだけ。それも偽りの冷酷な仮面を被ったまま、傷を舐め合うことしかできない。そうして彼らは2人だけの閻魔の領土に深くはまり込んでいく。
最ッ高じゃないですか!
私はベストエンドよりもこちらの方が好きです。


また、本作で何かというと登場する曼珠沙華の花が信行の個別イベントの初めの方で出てくるのも印象的でした。
曼珠沙華の別名は彼岸花、先祖を供養する行事である彼岸の頃に咲く花です。信行は曼珠沙華を見て死者の世界に旅立ってしまった父親のことを思い出していたのでしょう。

曼珠沙華は、仏教の経典においては天上の世界に咲く花とされ、見る者の悪行をやめさせる働きがあるとのことです。
その一方で日本の民間信仰(?)においては死や不幸を呼ぶ不吉な花とされ忌み嫌われています。この場面にはその両方の意味が込められているものと思います。
そしてこの作品のタイトル「下天の華」の「下天」は天上界のうちのひとつを指す言葉ですので、そこに咲く「華=花」は曼珠沙華であるかもしれません。
そう考えると信行の物語は、「下天の華」の字義通りのテーマを描いているのではないかという気がしてきます。

……何か自分でも言っていることがよく分からなくなってきました。
とにかく信行は良いですね。自分が共感できるのも勿論ですが、何よりシナリオが秀逸だと思うんです。


しかし、本編の出来が良い分、ファンディスクにあたる夢灯りでは果たして救いはあるのだろうかと心配になっています。謀反に失敗した時点で彼の役割はほぼ終わっていますので。公式ページ見ても明らかにメインキャラ扱いされてないっぽいですし。


余談ですが、主人公がくのいちと分かってからの感情の浮き沈みが激しくてメンヘラかよと思いました。あんな悪人面の攻略対象初めて見たわ。




羽柴秀吉

秀吉は朗らかで癖がなくて付き合いやすそう。一番友達になりたいタイプです。
そしてしょっぱなから正体がばれてしまうという。秀吉さんマジパネェっす!
ギャグっぽい話が多くて楽しかったです。乙女ゲーであんな選択肢を見ることになるとは思いませんでした。
気性は正反対でありながらも惹かれ合っていく過程が良いですね。

罪の華エンドは、俗にいう飼い殺しってやつですかね。秀吉の懐の深さと欲深さがひしひしと感じられました。




徳川家康

蘭丸と並んで初々しいキャラでした。動物好きなところがかわいい。
女性への苦手意識を、主人公が優しく注意深く接することで徐々に克服していく過程の描写に説得力がありました。とても微笑ましかったです。

また、家康の趣味が調剤であるというところから、薬草を使って薬を作るか毒を作るかが家康ルートの一貫したテーマになっているのが面白かったです。
くのいちである主人公は毒ばかり用いているけど、同じ薬草から家康は人を生かすための薬を作るのだという描写が、なんというか切ない。2人の立場の違いを端的に表現していると思います。


罪の華エンドでは、決して毒は作らないと言っていたはずの家康が、主人公をこれ以上苦しめないためにと毒を作って持ってくる。
ちょっとここで蘭丸と同じ狂気を感じました、若さって怖いですね。
しかし、主人公をただ断罪するのではなく、彼女はそういう世界しか知らないからこのような結末に至ってしまったのだと分析する慧眼と、そんな彼女を救いたいと願う心根は、さすが史実で太平の世を築く人物だなあといったところでした。




明智光秀

皮肉っぽいところが好きです。あと聞きたくない話は聞き流すところw
しかしSっ気の多いところがちょっと苦手でした。あれはツンデレ……なのか……? アダルティーなイベントが多いのもきつかったです。


彼のSっ気は罪の華ルートでいかんなく発揮されますね。罪の華ルートKOEEEEEEEEEEE!!!
気に入らない相手の家に主人公を送り込み、優しい主人公に情を湧かせたところで相手を潰す計略を実行させるとは……すさまじい鬼畜や……。おまけにいわゆる寝取られ属性がだいぶ歪んだ形で開花してるという。
なかなか人を信頼できない光秀がやっと信じられるようになった主人公。彼女が最悪の裏切り方をしたわけですから、表面上は平静を装っていますが、まあ正気ではいられなかったんでしょうね。
私の性癖とは全然合致しないものの、ストーリーとしては非常に面白いと思いました。




織田信長

この物語のいわば大黒柱ですね。良くも悪くも彼なしに『下天の華』は語れません。そして私が信行の次に好きなのがこのお方でございます。


信長ルートはとにかく燃える。こちらは私の性癖ど真ん中です。
主人公に「夢」という概念を教え、夢とはどのようなものであるかについて語り合い、主人公が夢を見つけるのを応援してくれるのが、恋愛対象というより年の離れた兄貴みたいで親しみが持てます。
それでいてちょっとわがままなところもあり、やっぱりカリスマなところもあり。魔王になるのは恨まれようが憎まれようが民草を幸せにしたいから。そんな彼の夢は日の本ではなく、世界……ッ!

かっこいいっす!! 応援するっすよ兄貴!! と信長ルートは常にアツい気分でプレイしていました。蘭丸が忠犬になるのも分かる気がします。
何より、信長に担ぎ上げられた時のほたるちゃんの満面の笑顔ね! あんなの他のルートでは見られない!!


ベストエンドでは、ほたるちゃんと信長、2人してひたすらかっこいいですね。
忍法帖の左側がまくられて鳳凰が出てきたところなんか鳥肌ものでした。そして鳳凰に変化したほたるちゃんと信長は悠然と夜空を舞う!
うおおおおお燃えるぜええええ!!
少年漫画も真っ青の展開ですよ。

信長ルートは他のルートにもまして主人公が忍びであることが活きているように感じました。
最後に比翼連理の契りを交わした2人がどのような世界をつくっていくのか、想像するだけでワクワクします。


罪の華エンドも、やはり違うベクトルでかっこいいです。
もはや信長と戦うこと自体が目的になってしまった刹那的な主人公!
爛れきった愛情を以て迎え撃つ信長!!
いや~いいっすね! その後のアダルティーな展開はちょっと苦手だし主人公の将来に光明が見えないのが残念ですが、燃えますね!




百地尚光

さて、待望のおっさんキャラだったわけですが。

他のキャラと違って交流イベントがないため、恋愛に至るのが若干唐突に感じました。
それと、信長たちも百地との恋愛をそんな簡単に許しちゃっていいの? と思いました。

総じて、どうも百地のルートだけ作りが荒い印象でした。まあオマケキャラ的な位置づけっぽいので仕方ないですね。
信行ルートと合わせてプレイすると、両者のストーリーが補完し合ってちょうど良い感じだったのかもしれません。夢灯りでの待遇改善を期待しています。

なぜ公式ページのURLがshisho.htmlなのかというと、主人公が最後まで「師匠」と呼んでいるからなんですよね、たぶん(笑)。
エピローグくらい名前を呼んでやってもいいんじゃないかと思いますが、そこにも主人公の不器用さが出ていて良い。




好きなエンド ベスト3

総評で書いたものに、ちょっと選評を付けました。


第1位 織田信行 罪の華エンド
「甘ったれ」の2人が心を偽り傷を舐め合いながら信長抹殺に全てを捧げる。その救いのなさがたまりません。


第2位 織田信行 ベストエンド
悲しき憎悪に染まった信行の運命を変え、彼が本来望んでいた穏やかな生き方を実現できた。
遥か的なカタルシスを感じられるエンドです。


第3位 織田信長 ベストエンド
鳳凰に変化して信長を救い出し、比翼連理の契りを交わして生きていく。
2人の波乱万丈の将来を想像するだけで勇ましい気分になります。


結論:やはり織田兄弟は強い
辿る運命は正反対ですが、それだけに下天の華の表のテーマと裏のテーマを担っている感じがします。





あ~楽しかった!!
実は戦国時代ってメディアで取り上げられすぎているので嫌いだったんですが、このゲームをプレイしてちょっと印象が変わりました。
これからは何かの機会に向こうから来たときは、拒否しないで味わってみようと思います。

それは置いといて、夢灯りの方の感想もそのうち書くつもりでいます。そのうち(白目)
とりあえず今1周目をクリアしたところですけど、信行ルートが影も形もなくてつらい。あと官兵衛が怖い。しかし半兵衛ルートは良かったです。


では、またどこかでお会いしましょう。




ネタバレなし総評はこちらに書いています。




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