皆様こんにちは。赤城です。
今回は私の助勤巫女(巫女バイト)の体験談をお伝えします。巫女バイトをやってみたい方や巫女バイトの内情に興味のある方のご参考になれば幸いです。
巫女バイトとは?
ざっくり言うと、神社の運営のお手伝いをするアルバイトです。詳しくは後述。年末年始のみ募集している場合が多いですが、神社によっては常勤の巫女バイトもいます。ちなみに、「巫女バイト」は通称です。神社ではアルバイトのことを「助勤」「助務」と呼びますので、正式な呼称は「助勤巫女」「助務巫女」です(参考:巫女バイトとは?仕事内容、時給、勤務時間や気をつけることなどを解説│#タウンワークマガジン)。
巫女バイトに応募した理由
私の近頃の悩みは会社の給料が安いことです。日々生活する分には困らないけれど、貯蓄や投資に回せるお金があまり捻出できず、将来が不安です。ま、給料だけでなく、何かと金遣いが荒いせいもあるんですが。でもこのくらいの支出は普通じゃない? と思わなくもありません。そこで私は思い出したのです。そういや友達が毎年巫女バイトやってたなと。巫女バイトなら年末年始の会社が休みのときだけ働けるし、仕事内容にも興味があるんだよなと。
早速私は友達と同じ神社の巫女バイトに応募することにしました。
……え? 副業はOKなのかって? 詳しくは聞いていないけどたぶん大丈夫でしょう。本業だけで安心して暮らせるだけの給料をくれない会社と社会が悪いのです。本業に支障が出ない範囲で働いているのだし、非難されるいわれはありません(キッパリ)。
私のスペック
巫女バイトになるための条件とか気になる方もいらっしゃるみたいなので書いておきます。全ての神社がこのスペックで受け入れてくれるわけではありません。こんな神社もあるんだよってことで読んでいただければ幸いです。- 性別:女性
巫女装束を着られるのは女性のみです。仕事の内容自体は、御祈祷の補助以外については、男性が務めても全く問題ありません。実際、人数が足りなくなった際に手伝ってもらうこともありました。 - 年齢:アラサー
もしかして巫女バイトはみ~んな20歳前後のピチピチの女の子ばかりだと幻想を抱いてました? 残念! アラサーも混じってるよ! - 結婚歴:未婚
「未婚」が条件のところが多いようですが、私のバイト先では応募するときに結婚したことがあるかとは聞かれなかったから、たぶん既婚者も普通に採用されます。巫女バイトが未婚でないと神様のお怒りが下るとかは特にありません。そもそも一般的な「巫女は未婚」という概念自体いかがなものかと思いますよ、私は。 - 容姿:普通
美人でなくても巫女バイトにはなれます。 - 髪型:黒髪ショートカット
応募時からショートカットでした、採用されてから切ったわけではありません。他のバイトの方は長髪が多かったですが、ショートカットも何人かいました。また、目立たない程度に染めている方もいました。 - 宗教:無神論者
結婚歴と同じく応募時に聞かれなかったので、たぶん空飛ぶスパゲティー教徒とかでも大丈夫です。ちなみに私の無神論の適用範囲は自分自身だけです。他の人の信じている神様には敬意を払っていますし、神社を訪問したらきちんと神様にご挨拶します。神社を馬鹿にしているなんてことはないのでご安心ください。
- 状態:喪中
昨年初春に祖父が亡くなったため、現在は喪中です。こちらの某質問箱の回答によると、喪中でも問題なし、忌中でもお祓いをすればよいみたいですね。
巫女バイトのご奉仕内容
私のご奉仕した神社の巫女バイトは下記のようなご奉仕(仕事)を任されていました。私が実際に携わったのはお神札・お守り授与、お賽銭の整理、境内の案内のみです。
お神札・お守り授与
お神札やお守りを屋外の「授与所」で参拝者の皆様に「お授け」します。一般的な言い方では「販売所で売っている」ことになりますが、お神札やお守りはお金を対価にして神様のご加護を受けるものですので、「販売所で売る」というのは正確な表現ではないらしいです。お神札やお守りが少なくなってきたら、社務所の奥から新しいものを持ってきて並べます。
参拝者から「どのお神札・お守りを授けてもらうべきか」などの質問を受けた場合もお答えします。分からない場合は神職さんをお呼びします。
巫女バイトと言われてまず思い浮かべるのがこれですよね。事実、巫女バイトの9割方の時間はこのご奉仕に割かれます。なぜなら、お神札やお守りは1年に1度、初詣で新年の幸福を願って替える習慣があり(参考:お守り・お札 | 北野天満宮)、あえて不正確な表現をすると、お正月は神社の一番の稼ぎ時だからです(笑)。それゆえ年末年始だけ巫女バイトをここぞとばかりに動員するのですね。
お賽銭の整理
社務所の中で、お賽銭箱に投入されたものを以下のように選り分けます。- お金(綺麗な5円玉以外)
- 綺麗な5円玉
- お金以外のもの(お神札・お守り・おみくじなど)
綺麗な5円玉を別にするのは、あとで種銭(福銭)を作るのに再利用するためです。
ちなみに、お神札・お守り・おみくじはお賽銭箱に入れるのではなく「古札返納所」に返すのが正しい処分方法です。お賽銭箱に入れてもお清めはしてもらえません。ご注意ください。
種銭配り
種銭(福銭)は金運アップの効果があると言われているお守りの一種です。綺麗に磨いた五円玉に紐を括り付けて作られます。お財布に入れておくことで効果を発揮するそうです。お金と引き換えにお授けしている神社もあれば、無料でお授けしている神社もあります。私のバイト先は後者でした。
境内の案内
私のバイト先はさほど大きな神社ではないため、専門の案内係はいませんでした。代わりに、ちょっとしたタイミングで境内の施設について質問され、ご案内することがありました。社務所の受付
御朱印や御祈祷の受付を行います。授与所と違い、暖房の効いた社務所内で座っていられるので、少々羨ましかったです。
御祈祷の補助
御祈祷中に合図の太鼓を打ったり、手順の説明をしたり、鈴祓いを行ったり、玉串を渡したりします。「そこまでやっていいの!?」感が若干ありますが、無論、絶対に神職が務めなければいけない部分(祝詞の奏上など)は神職が執り行います。
また、御祈祷の補助を任されるのはある程度の経験年数がある巫女バイトのみに限られます。
感想
最後に、巫女バイトをやってみての感想をお伝えします。お正月の神社、人多すぎワロタ
私は大変なコミュ障かつ怠け者で、「人間がいっぱいいる場所怖い」などとのたまい、お正月は自宅のコタツの中で死んだ目をしておせち料理を貪り食っている類の人種です。したがってお正月の神社にも数えるほどしか行ったことがありませんでした。今回巫女バイトとして久々にお正月の神社に赴いたところ、私がほんわか予想していたよりも遥かに多くの人が社殿前や授与所に列を成していて、とんでもないところに来てしまったと凄まじい恐怖を覚えました。必死で笑顔を作り声を張り上げて参拝者の皆様に接しましたが、よくよく顔を覗き込めば瞳孔が開きまくっていることがお判りいただけたかと存じます。
と同時に、失礼ながら、「え!? 神社ってこんなに人気があるの!?」と思ったりもしました。
前述の通り私は無神論者ですし、そんな私の周りも「類は友を呼ぶ」で信心の薄い人が大部分を占めます。また、私は旅行が好きで、旅先の神社にお参りをすることが多いのですが、よほど有名でない限りどこも閑古鳥が鳴いているような状態でした。このままでは神社もだんだん廃れていってしまうのでは、なんて思い、日本文化を愛する者としては寂しい気持ちになっていました。
しかし、今回巫女バイトをやってみたら、それなりの規模の神社にはお正月には参拝者がわんさと押し寄せ、大量のお布施をしていることが分かりました。また、参拝者も年配の方ばかりということはなく、若い方が大勢いらしていることも判明しました。それも、単に「みんなが初詣に行っているから自分もなんとなく」といった風ではなく、心底神社や神様の存在を信じて真摯に祈りを捧げているように私には見えました。
その結果、「なーんだ! 全然大丈夫じゃん!」とちょっと安心できて良かったです(笑)。
アラサーさん、やっぱりやらかしてしまうww
授与所でお授けするお神札・お守りは種類が多くて、最初のうちは判別するのが大変です。しかも、値札が付いておらずレジもないため、自分の手で数量を数えて暗算や電卓で値段を計算する必要があります。その上、神社は満員御礼、大勢の参拝者が授与所に詰めかけています。極めつけに、私は算数が苦手で、人気のない飲食店のホールスタッフとコンビニバイトしか接客業の経験がありません。もはや絶対に何かやらかすであろうことはご想像いただけますね?実際、ご奉仕が始まったばかりの頃にお納めいただくお金を間違えて参拝者の方を怒らせてしまい、あまりの申し訳なさと恥ずかしさに「社務所の中でお賽銭の整理だけやっていられますように」と無神論者のくせして神様にお祈りしました。もちろんその願いは叶わず、私はその後も瞳孔の開ききった状態で授与所に立ち続けたのでした。幸い、それ以降は致命的なミスをすることはありませんでした。
幸福感に満ちた空気を満喫できて楽しかった
寄せる人波に恐怖を覚え瞳孔が開いたり、値段を間違えてこっぴどく怒られ自信喪失したりもしたものの、それほど人の出入りが多くないときには、参拝者の皆様の明るい雰囲気に心が洗われるような気持ちになりました。新年を迎えたばかりの時期、大抵の人は幸せそうな顔をしています。特に、この時期の神社にお参りに来て、わざわざ授与所にまで寄る方々は幸福度MAXです。長蛇の列に並ぶことをものともせず、幸福を自ら掴みに来ているのですから。
そんな人たちと言葉を交わすと胸が温かくなり、普段はほとんど息をしていない自分の中のポジティブな感情が活性化され、今年はこの人たちみたいに前向きに生きたいな、と思うことができました。
私は今後も巫女バイトをするのでない限りお正月に神社に赴くことはないでしょう。でも逆に、巫女バイトのお勤めができる限りは毎年お勤めし、あの溢れんばかりの幸福感を満喫するのも悪くないかもしれません。
神社の裏側が垣間見える
巫女バイトとして神社の運営のお手伝いをすることで、かつては神聖で荘厳な祈りの場としか捉えていなかった神社にある種の生々しさを見出すことができたのも楽しかったです。例えば、お神札やお守りは新しいものが社務所の奥に置いてあると書きましたが、もっと詳しく書くと、社務所の奥の倉庫に、業者から納品された段ボールに入ったままごっそり置いてあるのです。私たち巫女バイトは、足りなくなっているものを見つけ出し、これまたごっそり授与所まで持っていきます。
コンビニの品出しみたいだ。そう思った瞬間、私の中のお神札・お守りのイメージがガラガラと音を立てて崩れていくのを感じました。何かもっと特別な扱われ方をされていることを期待していたんですよ、神聖な場所に恭しげに祀られているとか、ひとつひとつ手作りであるとか。
しかし、よく考えてみたら、それなりに名のある神社ともなれば大勢の参拝客がお札やお守りを欲しがるのは必定です。専門の業者に大量生産してもらわなければ欲しい人に行き届かず価格もべらぼうに高くなり、また大量のお神札・お守りを懇切丁寧にお祀りしておける場所は到底ありません。神社も資本主義社会の流れに掉さすことはできないんだなあ、などともっともらしいことを考えました(笑)。
神社の方によると、納品されたときにきちんと御祈祷は行っているそうです。ご利益はありますのでご安心ください。
以上、独身アラサーが巫女バイトやってみた結果をお伝えしました。
私は年齢的には巫女バイトの中で一番上くらいでしたが、経験年数と能力的には一番下っ端だったので、他の方と比べるとかなり限られたご奉仕しかしませんでした。それでも学びの多い、面白いアルバイトだったなあと思いました。
来年以降も受け入れてくれるところがあれば、ぜひ巫女バイトを続けたいです。