星を匿す雲

主にTVゲーム、漫画、小説、史跡巡りの感想を書いているブログです。基本的に【ネタバレあり】ですのでご注意ください。

公共交通機関で頑張る道東旅行③:弟子屈食いだおれ紀行

皆様こんにちは。赤城です。


先日、北海道の道東を阿寒→釧路→弟子屈→網走と旅行してきたので旅日記を書きました。3記事目は弟子屈周辺のご報告です。

※ところどころで野田サトル先生の『ゴールデンカムイ』ネタが出てきます。諸々苦手な方はご注意ください。




摩周駅

釧路駅から釧網本線に乗り、摩周駅に到着した。

摩周駅の線路の様子
摩周駅の標識
摩周駅の駅舎

涼しくてのどかな、いいところだ。駅舎の隣に足湯もあるので、電車待ちのときも退屈しなくて済む。また、駅員さんや観光案内所の職員さんも親切で、大変お世話になった。

本当のことを言うと、私はこういうのどかな場所であてもなくぼんやりするのが好きだ。バスの時間に急き立てられたり、不審者だと思われて通報されるのを恐れたりして、あまり実行には移せないのだが。




屈斜路線

今日の宿泊先である屈斜路湖畔のプチホテル、屈斜路湖物語 丸木舟に行くためには、阿寒バスの定期路線バス、屈斜路線に乗る必要がある。


屈斜路線は摩周駅ではなく阿寒バスの摩周営業所から発着している。したがって、乗車するためには摩周駅から少し歩かなければならない。

もし、周遊バスのない時期に屈斜路湖へバスで行こうと考えている猛者が私以外にいるのなら、くれぐれもご注意いただきたい。摩周駅は摩周湖行きのバスなどの発着地点だが、屈斜路線のバスはいくら待っても来てくれない。

道順はGoogleマップでも調べられるし、観光案内所で教えてもらってもよい。


摩周営業所に到着。
阿寒バス摩周営業所

屈斜路線に乗車すると、やはり乗客は私以外いなかった。この状態は2日後に摩周駅へ戻るために乗った際にも変わらなかったから、よほど利用者の少ない路線らしい。

車窓から見える風景はこんな感じ。
屈斜路線の車窓から見える風景






古丹分岐~古丹

屈斜路線を「古丹分岐(こたんぶんき)」というバス停で降りる。ここから20分ほどは歩きだ。
「古丹分岐」周辺からコタン方面を眺める

しかし、本州と違って暑くないし、特に急ぐ必要もないため、全然苦にならない。むしろ、草木の青々とした匂いや屈斜路湖の水面を堪能しながら歩けるので気分爽快だ。


屈斜路湖から釧路川が枝分かれする地点
古丹分岐から古丹へ向かってしばらく歩くと、屈斜路湖から釧路川が枝分かれする地点に到達。ちょっと感動する。


わずかな太陽の光を受けてきらめく屈斜路湖の湖面
釧路川の枝分かれ地点近くにて。
私が滞在していた頃はほとんど天気が悪かったが、それでもわずかな太陽の光を受けてきらめく湖面と、湖を囲む山々のコントラストは美しく、心を洗われた。



古丹(こたん)に到着。「コタン」は「村落」に近い意味合いを持つアイヌ語である。

ゴールデンカムイの某巻で杉元たちが宿をとったのはちょうどこのあたりであろうと思われる。うん、ここまで徒歩で来たし、だいぶ聖地巡礼っぽくなってきたぞ、私。

ちなみに同名のバス停も存在するが、こちらは期間限定の周遊バス「屈斜路バス」(弟子屈えこパスポートで乗車)が出ている時期しか使われないので注意が必要だ。
「コタン」バス停




屈斜路湖物語 丸木舟

この日から2日間、「コタン」バス停から歩いてすぐのところにあるプチホテル「屈斜路湖物語 丸木舟」に宿泊した。
「丸木舟」というレストランと一緒に営業しているホテルで、食事や日帰り入浴のみの利用も可能だ。
屈斜路湖物語 丸木舟


以降、印象に残ったことを書いていく。



設備など

部屋はこんな感じで、とても清潔。アイヌ文様がいい味を出している。
屈斜路湖物語 丸木舟の部屋
トイレはウォシュレット完備。

ネットでは素泊まりのみしか受け付けていないが、現地に行くと追加料金を払って朝食を用意してもらうことができる。
後述するようにレストランも併設されていて、とてもおいしいので、三食ここで食べても問題ないくらいだ。



屈斜路湖にものすごく近い

屈斜路湖物語」と副題(?)がついているのは伊達じゃない。勝手口を出て徒歩1分屈斜路湖を拝むことができる。
屈斜路湖
丸木舟のオーナーがいるときには、希望すれば屈斜路湖で釣りなどのアクティビティを体験できるらしい。残念ながら私が宿泊したときはほとんど留守だった。



風呂が素晴らしい

屈斜路湖にものすごく近いので、風呂のパノラマ窓からは当然屈斜路湖がよく見える。また、源泉かけ流しの濃い目・熱めの温泉であるため、疲れた体にしっかり沁み込んでくる感じがする。貸し切りにできるのもありがたい。屈斜路湖の眺めといい湯を独り占めできる。


なお、丸木舟のオーナーが運営していると思しき露天風呂も建物のすぐ近くにある(写真撮り忘れた……)。こちらは本当に湖を目の前にして入れる風呂である。しかも誰でも入場無料

屈斜路湖観光をされる皆様には、以降でご紹介する食事と合わせてぜひ堪能していただきたい。



食事も素晴らしい

ゆっくりと風呂に浸かった後は、アイヌ料理、およびアイヌ料理をアレンジしたB級グルメをいただける。


コタン丼

コタン丼
豚肉をタレとプクサ(ギョウジャニンニク)で味付けして卵でとじたもの。豚肉の肉肉しさとタレの甘さのハーモニーの中に、時折プクサのちょっと苦い香味が混じる。ヒンナ!


野生丼

野生丼
コタン丼のエゾシカ版。個人的にはこちらの方が好き。豚肉よりも臭みがなく、すっきり食べられる気がする。ヒンナヒンナ!!


ルイペ

ルイペ」とは、冷凍保存した魚を凍ったまま食べるアイヌ料理である。

丸木舟では、ヒメマスのルイペと、
ヒメマスのルイペ

パリモモ(日本語でいうウグイ)のルイペをいただける。
パリモモのルイペ

どちらも屈斜路湖でとれたものを出してくれる。

ゴールデンカムイで言及されていた通り、ちょっと不思議な食感だが、正直言うと「う~ん……ただの凍った刺身だね!」と思った。私は刺身がすごく好きで食べ慣れているので、余計そう感じたのかもしれない。刺身を普段あまり食べない人なら新鮮な気分になれるかも。


ユックオハウ

ユックオハウ
「ユック」とはアイヌ語で「シカ」のこと。「オハウ」とは「汁」のこと。つまりエゾシカ肉の汁物である。

シカ肉の上品な脂と根菜・プクサの素朴な味が、温かい汁の中に凝縮されている。硬めに煮てあるので食感も楽しい。ヒンナ!!


特製アイスクリーム

特製アイスクリーム
カボチャのアイスクリーム。メニューのあまり目立たないところに書いてあるが、地味においしい。上にあんみつのようなものがかかっているのがミソ。


朝食

朝食
アイヌ料理ではない、普通の朝食。しかし、ヒメマスの焼いたのや、ナスの揚げびたしがとてもおいしい。


どれが一番おいしかったかと聞かれると困るが、誰が食べても絶賛するだろうと思ったのはコタン丼である。
屈斜路湖周辺を訪問される際は、ぜひ一食試してみていただきたい。



モシリのライブがある

丸木舟は、アイヌ詞曲舞踊団 モシリというパフォーマンス集団の根拠地でもある。アイヌの伝統的な歌や舞踊をもとにしたライブ活動を行っている集団だ。複数の宿泊者の希望があれば、夜に店舗の中でライブを披露してくれる。宿泊者であれば2000円で見学できる。

私も機会があって見せていただいた。阿寒湖アイヌコタンの伝統そのままの舞踊とは方向性が違うが、やはりサロルンリフッタレチュイなどアイヌ舞踊の要素をふんだんに取り入れていて、面白かった。

ただ、個人的には一部のパフォーマンスのメッセージ性が強すぎるかなと思った。自然環境との調和とか災害への備えとかの大切さをめちゃくちゃストレートに説かれるのだ。言いたいことはとてもよく分かるが、少しのけぞってしまう。



色々と書いてきたが、「屈斜路湖物語 丸木舟」では、総じてとてもリラックスできる2日間を過ごさせていただいた。また屈斜路湖に行くことになったら、ぜひ利用したい。





アイヌ民俗資料館

丸木舟の隣に、「アイヌ民俗資料館」がある。
アイヌ民俗資料館

こぢんまりとした施設で、弟子屈周辺のアイヌの歴史や民俗について解説されている。

展示の情報量はそこまで多くないわりに入館料は高いので、暇つぶしに入るとがっかりするかもしれない。パンフレットなども特に販売していない。



映像資料について

ただ、館内の視聴覚室で観られるアイヌについての映像資料は一見の価値がある。そして可能であれば日本語版と英語版の両方を観た方がよい。なぜなら、日本語版と英語版、両方観て初めてアイヌの光と影が分かるからだ。


日本語版の映像資料「イランカラプテ」を観ると、アイヌの末裔の人々が現代社会でアイヌ文化を守り伝えている実態を知ることができる。彼らがとても前向きにアイヌ語や刺繍、歌、踊りなどを継承していることが分かって、感動する。

ナビゲーター役としては俳優の宇梶剛士さんが出演している。お母様がアイヌなのだそうだ。


一方、英語版の資料"Ainumosir"は色合いがガラッと変わり、アイヌの迫害の歴史を主に解説している。ゴールデンカムイでは溌溂と描かれているアイヌの人々だが、江戸時代や明治時代には差別的な扱いも受けていた(そして現在もその後遺症は残っている)のだと実感した。

なんだか申し訳ない気持ちになった。日本人として、もっと勉強しなければいけないと思った。






美幌峠

屈斜路湖に到着した翌日から、ようやく期間限定の弟子屈地域を周遊するバスが運行し始めた。


丸木舟の店員さんの勧めに従い、まずは「屈斜路バス」で屈斜路湖を見渡せる美幌峠に行ってみた。


美幌峠から望む屈斜路湖
美幌峠から撮影。強い風が吹きつける中、岩場の上に仁王立ちし、屈斜路湖と中島を眼下に望むことができた。


美幌峠レストハウス
美幌峠レストハウス。お土産や食事が販売されている。
せっかくなので、いくつか買ってみた。



揚げいも

揚げいも
北海道の郷土料理の一つ。外の衣はホットドックのように甘く、中はほくほくのじゃがいも。
ホットドック好きなら何個でも行けそうなジャンクフード感がある。



ハスカップジュースと熊笹あんぱん

ハスカップジュースと熊笹あんぱん

ハスカップジュースは目が飛び出るほど爽やかにおいしい。ブルーベリーとかプルーンとかの類があまり好きではないため売店で見かけたときは躊躇したが、買ってよかった。

熊笹あんぱんは、パン生地の中に熊笹が練り込まれている。
熊笹あんぱん
よもぎあんぱんのような味がする。こちらもなかなかおいしい。






摩周湖

周遊バス「摩周湖バス」で摩周湖にも行った。

しかし、このときはあいにく大雨が降っており、摩周湖の姿を見ることは叶わなかった。
:霧というより雨の摩周湖
なお、私はすぐに諦めてしまったのだが、この日は午後になって晴れ間が出たので、辛抱強く待っていれば摩周湖を拝めていたかもしれない。チキショウ、次の機会こそは!


仕方ないので摩周湖第一展望台レストハウス買い食いをした。花より団子とはまさにこのことだ。



いもだんご

いもだんご
じゃがいもと片栗粉で作られた北海道の郷土料理。

これ、すごくおいしい! 普通の米で作った団子のようにモチモチした食感だけど、噛むとしっとりとじゃがいものデンプンの味が口の中に沁み出してきて、甘じょっぱいしょうゆダレと絡まる。

お財布とバスの時間のことを考えなければ延々食べられたし、食べているうちに摩周湖ともご対面できていただろう。当時の自分の決断力のなさが悔やまれる。




黄山

弟子屈旅行で一番衝撃的だったのは、黄山アトサヌプリ)だ。

黄山川湯温泉の硫黄泉の起源だ。明治期~昭和期にかけては硫黄採掘が行われていた。

明治期は囚人を使って採掘していたが、多数の囚人と看守に健康被害が出たために操業を停止した。ゴールデンカムイでは操業停止後に密かに囚人を駆り出して採掘を再開していたというブラックな設定になっている。

ここも、周遊バス「屈斜路バス」で行くことができる。


硫黄山、やや遠景
黄山、やや遠景。煙がもくもく湧いている。

硫黄山、やや近づいた写真
ちょっと近づいた。山肌はほぼ死の大地と化している。

硫黄山の硫黄の噴気孔
硫黄の噴気孔。ここまで来ると卵の腐ったような臭い湯気がすごい。長く留まっていると中毒か何かで倒れそうだ。手を地面に近づけると、かなり熱いのが分かる。

硫黄の噴気孔がたくさん集まっている
噴気孔がいくつも集まっている場所もある(立ち入り禁止の柵の先)。もはやこの世のものとは思えない。まるで地獄が現世に現れたみたいだ。煙の向こうから何か得体の知れないものがぬっと現れそうな気がして怖かった。


こんな中で硫黄採掘なんてしていたら、そりゃあ病気にもなるだろう。ゴールデンカムイの某キャラクターの苦労が偲ばれた。










最後までお読みくださりありがとうございました!
旅日記は網走編に続きます!