皆様こんにちは。赤城です。
福岡県の離島、相島で相島積石塚群などを見学してきました。
相島積石塚群をはじめとする島内の見どころとアクセスについてご紹介します。
相島ってどんなところ?
福岡県沿岸にある、ハートの形をした小さな島です。人口約300人、主産業は漁業。
昨今は「猫の島」として人気を博している他、海釣りを目的に訪れる方も多いとのこと。
港の周りにはこんなふうに大量のお猫様がたむろしています。
しかし、実は相島の売りは海の幸と猫と釣りだけではありません。
なんと周囲8kmほどの小さな島ながら、史跡がぎっしり詰まっているのです!
その筆頭が相島積石塚群。本記事の目玉です。
相島について詳しく知りたい方は、公式Webページやパンフレットをご覧ください。
(参考:相島 - 新宮町ホームページ、相島 (福岡県) - Wikipedia、福岡県糟屋郡新宮町大字相島 - 人口総数及び世帯総数 | 人口統計ラボ - 国勢調査GIS 平成22年版)
アクセス
JR博多駅から相島までの行き方をご案内します。とりあえず島の様子を見てみたいという方は次の項目へどうぞ!
博多駅から相島までは、
電車→バス→渡船
と乗り継いでいく必要があります。
電車
JR鹿児島本線 門司港・小倉方面行き(特急以外)に乗車。福工大前駅で降車。
時刻表
下記リンク先でご確認ください。1時間に6本程度出ています。>>博多駅(JR鹿児島本線 門司港・小倉方面)の時刻表 - Yahoo!路線情報
※土曜日の時刻表になっています。必要であれば上のボタンで曜日を切り替えてください。
運賃
片道280円です(2018年8月6日現在)。バス→渡船
駅前のバス停でコミュニティバス マリンクス(相らんど線第1ルート)に乗車。新宮港で降車。
新宮港から町営渡船「しんぐう」に乗船。
約17分で相島の船着き場に到着です。
時刻表
下記リンク先でご確認ください。バスの時間に合わせて渡船も発着するようになっています。季節ごとに時刻が違うのでご注意ください。
運賃
下記リンク先でご確認ください。バスが片道100円、渡船が片道460円です(2018年8月6日現在)。
渡船の留意点
単刀直入に言おう。行きはすっっっごく揺れます。事前に酔い止めを飲んだ方がいいです。普段船酔いする人もしない人も。
船から島の名物の一つであるめがね岩が見えるらしいのだけれども、とても外を呑気に眺めていられる状況ではありません。私は船で吐きそうなくらい酔ったのは初めてでした。これが20分も続くとか地獄かよ。降りてからしばらく動けませんでした。
逆に帰りはほとんど揺れません。ご安心ください。
島内の移動手段
この島では、観光客の移動手段は徒歩、自転車、電動自転車の三択……ッ! なぜなら、タクシーやレンタカー、バスがなく、自家用車を持ち込むこともできないからです。港で猫と戯れる以外にも色々やってみたいと思っている方は、ぜひ観光案内所で電動自転車を借りてください。いいですか、普通の自転車ではありません。電動自転車を借りるのです。
なぜかといえば、相島は意外と坂道が多いからです。私は余裕ぶっこいて普通の自転車を借りた結果、だいたい半周くらいしたところで気力が尽きました。
レンタサイクルについては以下のリンクで要確認です!
>>相島レンタサイクルのご案内 Guidance of rental bicycle in Ainoshima. | 新宮navi 新宮町おもてなし協会公式
観光案内所自体が土・日・祝しか営業していませんのでご注意ください!!
ぐるっと半周! 相島
ここからは、相島の港付近と東側を中心に、観光スポットをご紹介いたします。○○だけ見たい! という方は以下のリンクをクリックしてください。イチオシはもちろん相島積石塚群です。
猫・猫・そして猫! 港付近は猫だらけ
渡船「しんぐう」で絶叫マシーン並みに揺られ、ほうほうの体で船着き場に到着。すると、早速何匹かの猫がたむろしているのが見えます。
これだけでもうだいぶ癒される。来てよかった、相島。
ただ私の接し方がアレなためか、みんな塩対応なんですよね~。近づいて撫でようとするとタダでは触らせんぞとばかり逃げる。世知辛い。だがそこがいい。
桟橋みたいなところ
港湾関係の知識がなくて呼称が分かりませんが、桟橋みたいなところにも猫がいたのが印象的でした。
人間に全く無関心なお猫様たち。
ふと岩場の上から海を覗くと、
ええーっ!? そこ、すぐ下が海だけど!? 猫って水が苦手じゃなかったっけ?
驚きのあまり、岩を踏みしめてジャリッと音を立ててしまいました。
すると、猫の方も見られているとは思わなかったのか、逃げようとして慌てふためき、海に落ちそうになりました。
とっさに身を乗り出す私。私のズボンに爪を立てて事なきを得る猫。よ、よかったぁ~。殺猫事件を起こしてしまうところだった。あっぶね~。
私が危害を加えないと知って安心したのか、猫はまた元の場所でゴロ寝を再開します。
んんッ、がわ"い"い"……! 驚かせちゃってごめんね。
先波止
さて、ここからは徐々に史跡もご紹介していきたいと思います。船着き場と桟橋みたいなところの間あたりに、「先波止」という史跡があります。
>>たのしんぐう 先波止とは
これは、福岡藩が朝鮮通信使を迎えるために島民を使って造らせた波止場2つのうちのひとつです。もうひとつの波止場である「前波止」は、先ほどの船着き場です。
そうです。相島はなんの変哲もない小さな島のように見えて、朝鮮通信使をもてなすために何度も使われていた、非常に由緒正しい島なのです!
しかしここで驚くだけで終わるなかれ。相島には、まだまだたくさんの歴史と絶景が眠っています。
剣神社
船着き場から相島小学校の脇を通り抜けてメインの道路(県道599号線)を上がっていくと、小さな道が右側に伸びています。こういう道って無性に探検してみたくなりますよね!? ということで、行ってみましたー!
※ここから私が辿ったのは、島の中を1周しているメインの道路(県道599号線)ではありません。その道から枝分かれしている、狭く、舗装されていない道です。足腰に不安のある方や小さなお子様と一緒の方は、県道599号線を進むことをおすすめします。
しばらく行くと、こんな看板が林に半ば埋もれた状態で見つかります。
ここで左に進むと剣神社があります。
>>たのしんぐう 剣神社とは
明治時代に多数の刀剣が見つかり、それらをご神体にしたらしいです。話を聞く限りでは激熱プレイスですが、まあごく普通の神社です。
拝殿自体はそれなりに綺麗です。しかし、あまり参拝者もいないらしく、鳥居や拝殿に蜘蛛の巣が張り巡らされていました。廃墟マニア予備軍の私にはグッときましたね。神社のロマンとかそっちのけで、しばらく蜘蛛を観察するのに夢中になりました。
海辺の道と波の音
さて、さっきの看板のところまで戻って、今度は右(「日蒙供養塔」の方)に進みます。すると、海辺の道に出ることができます。
いやあ、綺麗ですねえ。
ぼんやり見入っていた私の耳に、海の方から「ゴロゴロゴロ」と、まるで重いものを転がしているかのような音が聞こえてきました。んん? なんだこの音?
実は、相島の浜は、礫(大きめの石)ばかりの「礫浜」です。
だから、浜に波が打ち寄せるとき、波に動かされた礫が互いにぶつかり合って「ゴロゴロ」と音を立てるんですね。「ザザァ」じゃないんです。うんうん、実に面白いなあ。
日蒙供養塔
海辺の道をしばらく歩いていくと、相島積石塚群へ通じる道が見えてきます。青い看板の左に続いている道です。が、ここはいったんスルーして、もうちょっと先まで行ってみます。
すると、海辺にポツンとこんなものが建っています。
これは「日蒙供養塔」。1967年建立と、モノ自体は意外と新しいです。
しかしその由緒はというと。
中国にフビライ・ハンが君臨していた時代、モンゴル軍が2度にわたり九州に攻めてきたことがありました。そう、元寇です。
そのときに亡くなった日蒙両軍の兵士の遺体は相島の海岸にもたくさん流れ着きました。それらを敵味方の区別なく葬った「蒙古塚」が島のどこかにある、と言われているそうです。
でも、どこにあるかは分からなくなってしまったので、とりあえずここにもう一度建ててみた、という感じらしいです。
う~ん、現在の猫パラダイス状態からは到底想像もつかない光景が、当時の相島の海岸には広がっていたんでしょうねえ。
鼻面半島
この海辺の道は、まだ先まで進むことができます。ちょうど鼻面半島の途中くらいまでかな(Googleマップではそのような地名は見つかりませんが、相島のパンフレットに書いてあります)。
途中で大きな岩に道を阻まれますが(写真中央)、よく観察すると岩の傍らにロープがあるので、それを手掛かりにして岩を越えられます。
ここはだいぶスリリングです。
すると、こんなふうに、今までとはまた違った種類の岩が現れます。
なんかかっこいい。
この岩も乗り越えて行きつく終着点は、ここ。
海蝕洞ってやつですかね。波の浸食の作用でこんなにまっすぐな線が刻まれるなんて、不思議な気分になります。
中はこんな感じです。
自分で中に入る勇気はありませんでした、チキンですみません。暗くて奥に何があるか分からなかったのと、普通に潮が満ちてきていて戻れなくなりそうだったのが怖かったんです。写真を撮影している間にも、足元の岩がだいぶひたひたになっていました。
皆様、ロープから先はくれぐれも気を付けてください!
相島積石塚群
海辺の道を堪能したら、いよいよ相島積石塚群へ向かいましょう。そもそも相島積石塚群って何?
古墳時代の墓である古墳。その中でも特に珍しい積石塚が集まっているのが、相島積石塚群です。何が珍しいかというと、普通の古墳が土と石でできているのとは違い、全て石だけで造られているんです。
>>相島積石塚群(国指定史跡) | 新宮navi 新宮町おもてなし協会公式
さあ、行ってみよう!
海辺の道をここまで戻って、左へ。
しばらく歩くと、
う、うおおおおおお!!!
すげええええ!! オール石造りの古墳がたくさんあるうううう!!!!
全部で254基あるそうですよ! すごいっ!!
先ほどお伝えした通り、多くの古墳は、土と石で造ります。そのため、時間が経つにつれて墳丘に草木が生えてきて、さながら自然の小山や丘のような見た目になるんです。でも、ここは石だけでできているからか、はたまた地元の方が整備されているのか、現在に至っても建造当時の力強い姿が残っていますね。
素晴らしいッ!! 素晴らしすぎて涎がドバドバ出るッ!!!
ふむふむ、これは竪穴式石室ですかね。
これは横穴式かなあ。
これらは竪穴式で、天井石も残っている感じ?
積石塚群の中央付近にやってくると、何やら一段と大きくて立派な積石塚が見えてきます。
これがこの積石塚群最大の古墳、相島大塚(120号墳)です。長軸の長さは約20m。盗掘により崩れてしまったため、復元工事をしてこのように綺麗な姿が蘇りました。
写真だと全く分からないですが、石室も大きいです。
ちなみに、メインの道路(県道599号線)を辿ってくると、こんなふうに120号墳の真ん前に出るようです。
古代のロマンに浸れる場所
ところで、積石塚群があるのも海沿いでして、眼下には礫浜が見えます。そのため、両耳にゴロゴロゴロという重い波音がずっと響いてきます。
またここからはめがね岩(写真やや左寄りの中央)が、空、玄界灘、鼻面半島、そして積石塚群という鮮やかなコントラストの中に浮かんでいるのを一望することもできます。
ここで永遠の眠りに就きたいと考えたのは、いったいどのような人たちだったのでしょう。
積石塚群はかなりの長距離にわたって続いています。足元の装備が問題ない方は、ぜひ端から端まで歩いてみてください。
私が行ったとき、他の見学者はほぼ見かけませんでした。相島大塚(120号墳)をさらっと見て帰った人が2、3人いたくらい。実に勿体無いことをするなあ。
誰もいない積石塚群の中を、ゴロゴロという重々しい海鳴りを聴きながら歩くと、まるで魂が遥かな昔へ引き戻されたような感覚を覚えますよ。
以下、相島積石塚群で撮影した積石塚の写真です。クリックで拡大してご覧ください!
太閤潮井の石
日蒙供養塔で中世に思いを馳せ、相島積石塚群で古代のロマンを満喫したら、次は近世の風もちょっぴり感じてみたくなりませんか?そんなあなたにぴったりなのが、太閤潮井の石。
県道599号線に戻ってしばらく西へ進むと看板があります。
階段を上っていくと、右に「岩宮神社」という神社があって、
>>たのしんぐう 岩宮神社について
左に太閤潮井の石があります。
>>たのしんぐう 太閤潮井の石について
ん? さっきの積石塚群と区別がつかないって? 奇遇だな、私もだ。
でも、この石の山もまたすごい歴史を持っているらしいです。
豊臣秀吉(太閤)は、晩年に2度、朝鮮出兵を行いました。相島は、朝鮮出兵の基点となった佐賀県唐津市の名護屋城(愛知県の名古屋城ではありません)に諸国の水軍が集合する途上にありました。そのため、立ち寄った水軍の人々が、戦勝祈願のために海岸の石を1個ずつ盛って、近くの「穴観音」の観音様にお参りしました。その石が大量に積み重なったのが、この太閤潮井の石だということです。
結局、朝鮮出兵は大敗を喫しましたけど、せめて兵士たちの魂だけは観音様によって救われているといいですね。
ちなみに太閤潮井の石の近くには碑的なサムシングがあるんですが、
えっ怖っ!! なんで太閤の文字だけ削れてるの!? いつからこの状態なんですかね……。
なお、穴観音のあった絶壁「タキノダン」自体には、岩宮神社の横の道から近づくことができます。しかし、穴観音は別の場所に移されていて、姿を拝むことはできないそうです。
>>穴観音(あなかんのん) - 新宮町ホームページ
相島西側の観光スポット
ここまで、主に島の東側の観光スポットをご紹介してきました。西側もご紹介、といきたいところなのですが、このあたりでもやしっ子の私には普通の自転車を借りたツケが回ってきました。あと、積石塚群に夢中になってお昼ご飯を食べなかったツケも。ゆえに、西側を見学する気力もなく町へ降りてしまったため、残念ながらご紹介できません。
しかし、島の西側にも、江戸時代に異国船を監視するために造られた遠見番所跡や、朝鮮通信使を歓待するための館跡である朝鮮通信使客館跡など、見どころがたくさんあります。
電動自転車を借りられた方は、ぜひそれらもじっくり見てみてください!
終わりに
事情により東側だけの紹介となってしまいましたが、相島、いかがでしたか? めちゃくちゃ面白くないですか!?相島のアイデンティティは猫だけじゃありません。相島積石塚群をはじめとする、古代~近代までの幅広い時代にわたる史跡もこの島の大きな魅力です。
猫好きな方もそうでない方も、ぜひ相島を訪れて、相島の丸ごと全てを満喫してください!!
最後に、夕暮れの相島の海をお見せしてお別れすることにいたします。
訪問記録
訪問日:2017.11.23天気:晴れ
交通手段:自転車、徒歩