皆様こんにちは。赤城です。
先日、北海道の道東を阿寒→釧路→弟子屈→網走と旅行してきたので旅日記を書きました。
1記事目は阿寒周辺のご報告です。
※ところどころで野田サトル先生の漫画『ゴールデンカムイ』ネタが出てきます。諸々苦手な方はご注意ください。
この旅行のコンセプト
私は、とにかくこのクソ暑い本州から脱出したかった。暑くないところといえば? 北海道じゃん。北海道は『ゴールデンカムイ』の舞台にもなっているから、コース次第では聖地巡礼もできるかもしれない。じゃあ、とりあえず昔家族と一緒に行ったことのある屈斜路湖・摩周湖付近を中心に観光してみるか。釧路空港から阿寒湖に行って阿寒湖アイヌコタンを見学、屈斜路湖、摩周湖の辺りに泊まり、網走へ抜けて網走監獄を観るのなんかどうだろう。うん、完璧だ。
車は運転できないけど、バスとか使えばどうにかなるだろう。よし、早速飛行機と旅館を予約するぞ!
と、こんな感じのテキトーなノリで行ってきたので、予めご承知おきください。
釧路空港
とある朝、羽田空港から釧路空港へ飛んだ。飛行機の機内から空港へつながる通路で脳内に沸いた北海道の第一印象は。
す、涼しい……!
それもそのはず、気温はこんな感じである。
体液という体液を煮え立たせるような熱風も、肌を突き刺すような日差しもここにはない。
本当に同じ日本国内なのか、ここ? しばらく呆然として、それからようやく実感した。
そう、私は苦労して有給を取って一人でここまで来たんだ。今日から数日間、私は自由の身だ!!
阿寒エアポートライナー
空港の土産物屋を冷やかした後、阿寒エアポートライナーに乗って阿寒湖温泉街へ向かう。
車両内がとにかく快適で、私の中のバスの概念を完全に覆してきた。
座席間の幅が広く、隣の知らない人と肩がぶつかるだのなんだのといった心配をせずに済むし、座席は寝転がれるレベルまでリクライニングできる。足置き台も備えつけられている。
至極清潔なトイレもある。ウォシュレットがついていないのが残念だが、これ以上の贅沢は言えまい。
私は座席を限界までリクライニングさせてふんぞり返った。バスが発車すると、窓の外を北海道らしい雄大な景色が流れていく。実に気分がいい。
阿寒湖アイヌコタン
阿寒湖温泉街に到着。宿に荷物を置いて、今回の旅の目的の1つである阿寒湖アイヌコタンに向かった。
阿寒湖温泉街のすぐ近くにあり、民芸品店などが立ち並んでいる他、阿寒湖アイヌシアター イコロで定期的にアイヌ古式舞踊が上演される。
という触れ込みなのだが、なんというかこう……思いの外ぱっとしない。
子供たちの夏休みも始まっていない平日の昼間だからなのかもしれないが、観光客の姿はまばらで、不定休なのか兼業の仕事に出かけているのか、半分くらいの店が閉まっているのである。
どこかのスピーカーから、アイヌコタンについて説明するナレーションがエンドレスに流れており、聴く者もいない大通りに響いている。
私は出発前に父親に今回の旅行について話したときのことを思い出した。父親は「アイヌコタンかぁ~、ザ・観光地って感じかな(笑)。期待しすぎるとがっかりするよ」などと毒舌を吐いていた。なるほど、おっしゃる通りで。
アイヌ生活記念館
まずはアイヌコタンの外れのアイヌ生活記念館という施設を見学した。展示資料はそこまで多くない。また、日本語の文法が若干危うい説明書きがいくつかあり、ある種の趣深さを感じる。
だが、鮭の皮で作った靴チェプケリなども展示されているので、アイヌコタンを訪問したのなら見て損はないと思う。
民芸喫茶 ポロンノ
そうこうしているうちにお昼の時間になったので、腹ごしらえをすることにした。アイヌコタンにアイヌ料理を食べさせてくれる「民芸喫茶 ポロンノ」という店があることを、私は食べログでリサーチしていた。アシリパさんと杉元みたいにヒンナヒンナできる日がついにやってきたのだ!
ポロンノでは以下の料理を頼んだ。
ポッチェイモ
ジャガイモを自然発酵させたもの。
外側は固く、内側は柔らかく、ちょうど焼いた餅のような食感だ。
味はほぼない。塩をかければ普通に食べられる。
蝦夷鹿のたたき
こ、これは旨いッ!
獣肉にありがちな臭みが全くない!! 爽やかな風味、それでいてしっかり肉肉しい!! とぉーってもヒンナ!
チェプセット
チェプオハウ(鮭汁)、アマム(炊き込みご飯)、めふん(鮭の腎臓の塩辛)のセット。
- チェプオハウ
出汁は昆布と塩、具はサケ、ニンジン、ジャガイモ、フキ、ネギ、そしてプクサ(ギョウジャニンニク)と、非常にシンプルなのだが、これも実に旨い!!汁の中にそれぞれの具の味がたっぷり染み出している。サケは意外に塩辛く、汁と一緒にいただくと旨さとしょっぱさが混じり合ってこれまたおいしい。ヒンナヒンナ!!
- アマム
素朴で優しい味わいだった。他のものと合わせて食べるから、ちょっと目立たないかもしれない。 - めふん
ごめんなさいマジで無理。ポッチェイモにつけてなんとか完食した。いや、これが格別まずかったということではなく、私は内臓系の食物の生臭さがまるでダメなのだ。たぶんアシリパさんにはストゥでタコ殴りにされると思う。
野田先生のサイン
料理に舌鼓を打っていたら、店員さんに「もしかして、ゴールデンカムイのファンの方ですか?」と話しかけられた。なぜバレた!? やっぱり年齢と性別と雰囲気と注文したものでだいたい分かるのだろうか。
おずおずと頷くと、店員さんはなんと野田先生直筆のアシリパさんのイラストとサイン入りのゴールデンカムイ1巻を見せてくれた。さすがゴールデンカムイのお膝元である。
著作権的にセーフか分からないため写真は掲載しない。ゴールデンカムイファンの皆様は、ポロンノを訪れた際は自分がファンであることを盛大にアピールしてみるとよいと思う。
アイヌ古式舞踊
お腹も膨れたところで、アイヌコタンの端にある阿寒湖アイヌシアター イコロに向かった。アイヌ古式舞踊を観るためだ。上演時間は30分ほどで、アイヌの伝統的な舞踊が音声と画面で解説された後、実際に5~6人ほどの踊り手によって披露される。演じる側も観る側も人数が少ないせいか、終始社会科見学みたいな空気が漂っていた。
しかし、ゴールデンカムイでアシリパさんが披露したサロルンリムセ(鶴の舞)は掛け声が面白かったし、踊り手が一斉に黒髪をバッサバッサと振り乱すフッタレチュイ(黒髪の踊り)は見ごたえがあった。
写真は撮影禁止だったので、興味のある方は公式サイトの写真をご確認いただきたい。とにかくフッタレチュイはすごいぞ。東京の街中とかでパフォーマンスしたらSNSで急速拡散されるレベル。
なお、夜21:00からはイオマンテの火まつりというのをやっている。
演目はさほど変わらず、よりライトな観光客向けのイベントになっており、踊りの解説がない。
演出上仕方ないのだろうが、フッタレチュイ(黒髪の踊り)が突然始まったときは観客席が軽くざわついており、「まあ無理もないよな」と思った。あれは事前に解説しておかないと心臓に悪い。
なお、いずれの場合でも、前の方の席に座っていると最後は半強制的に踊らされる。恥ずかしがり屋な方は注意が必要である。
Tシャツ購入
アイヌ古式舞踊を観た後、アイヌコタンの民芸品店を一通り見学した。木彫りの民芸品、特にアクセサリー類のデザインは独特で美しく、普段こういったものにまるで興味の湧かない私でも購入したくなった。例えばこんな感じである。どうせすぐに失くしてしまうからと思って買わなかったけど。
……と、そんなことより、本日の急務は明日以降に着用するTシャツを買うことだ。実は旅行前日にドジを踏み、替えのTシャツを全て自宅に置いてきてしまったのである。
幸い、アイヌ文様の入った観光客向けのTシャツはアイヌコタンの各店舗で山と販売されていた。私は「サンラマント」という店で買った。店員さんは気さくでいい人だった。
こちらが今回購入したTシャツ3着。意外とシャレオツではなかろうか?
特に、中央のTシャツはかなり気に入っている。ヒグマのシルエットの胴体部分に阿寒湖の風景が、足部分にアイヌ風の文様が入っているものだ。Tシャツのデザインを決めるコンテストで大賞になったデザインなのだとか。もう生産はしていないらしく、店に置いてある分しか在庫がないとのこと。
ちなみにサンラマントの店員さんも「最近は漫画の影響で人気が出てますね。えっお客さんも? そうです、ゴールデンカムイですよ~」などと言っていた。阿寒湖アイヌコタンはゴールデンカムイ推しなのだろうか。
嬉しくなって、カウンターに置いてあったアイヌ関連の書籍も購入してしまった。全く、いいカモである。
>>更科源蔵アイヌ伝説集より アイヌの伝説
>>マンガ版 アイヌ語豆辞典
まりもプリン
アイヌコタンを見学し終わるとやることがなくなった。阿寒湖は見どころがたくさんある、が、公共交通機関しか交通手段を持たない者にとってはどの見どころも遠すぎるのだ。
ちなみに観光案内所では夏季~秋季にかけてレンタサイクルのサービスを提供しているはずだが、私が行ったときはなぜか「やってないですけど」と塩対応された。そこに自転車置いてあるのに!? ガッデム。
まあ、あくせく観光しなくても別にいいやと思い、土産物屋が連なる道をぶらぶら歩くと、何やら意外な文字列が目に留まる。
まりもプリン……だと……!?
これはもしかして、最近流行りのミドリムシ的なアレと同じく、マリモが入っているプリンなのか!!?
だいぶ興奮して購入し、宿に持って帰って開けてみると、なんだ、普通のプリンだ。味もごく普通。形状がマリモっぽいというだけのようである。
爪楊枝でプリンを包むビニールに穴を開けると、プリンがつるっと器に収まる仕組みになっている。やってみると地味に面白いので、お子さんと一緒に旅行している方などは購入すると楽しいかもしれない。
類似の商品に「まりもようかん」があるのは後で知った。こっちは色もマリモだ。
阿寒湖遊覧船
このあたりで下調べしないマンの私も薄々感づいてきた。阿寒湖がめちゃくちゃまりも推しだということに。まりもプリンを食べ終わって温泉街に足を伸ばすと、ちょうど遊覧船「くろゆり号」が出航する時刻だったので乗ってみた。
船内アナウンスの半分以上は阿寒湖のマリモの解説とマリモの演歌とマリモのポップミュージックで占められており、マリモについての知識が強制的に身につく。
さらに、遊覧船は「マリモ展示観察センター」に停泊し、施設の中にたゆたう大小さまざまなマリモを観察することになる。
そして、券売所隣の売店で購入したミネラルウォーターも、よく見たらマリモをフィーチャーしていた。
マリモ尽くしである。
それもそのはず、後で知ったことだが、阿寒観光協会によるとこの遊覧コースは「阿寒湖マリモクルーズ」というそうだ。乗船時はそんなこと一言も言われなかったぞ(笑)。
マリモは環境悪化の影響を受けやすく、阿寒湖でも生息数が減少している。展示観察センターにいるマリモたちは、展示期間が終わると元いた水域に戻されるのだとか。
ちなみに、サンラマントで購入した「アイヌの伝説」によると、アイヌはマリモをトーラサンペ(湖の妖精)といって嫌っている
らしい。
また、阿寒湖の神様に嫌われて湖に住めなくなってしまったペカンペ(菱の実)が、腹立ちまぎれに湖畔に生えていた草を丸めて湖に投げ込んだものがマリモになった、とも同書は伝える。なんのこっちゃい、と思うが、伝説とは得てしてそういうものなのだろう。
ボッケ遊歩道
クロユリ号でマリモ以外でわずかに解説されたもののひとつが「ボッケ」である。ボッケと言えばゴールデンカムイの谷垣。聖地巡礼ktkr。遊覧船を降りて、私はまっすぐボッケ遊歩道へ向かった。
ボッケまでの道のりは結構長い。ずっと湖畔を歩くので、ところどころで思わずハッとするような景色も見られる。
道の半ばあたりで、木をノミで叩いているようなカッカッカッという音が森の中から響いてきた。
え、もしかして不審者!?
辺りを見回しても誰もいない。まさか心霊現象か……と震え上がるも、よくよく目を凝らすと。
うわーッ、エゾリスだァァァーー!!! どんぐり食べてるぅー!! かわいい!!!(大興奮)
年甲斐もなく一人ではしゃいでパシャパシャ写真を撮りまくりながら、アシリパさんがいたら絶対涎を垂らすだろうな、と思った。
ボッケはとてつもなく硫黄臭く、泥がボコボコ音を立てながら噴き出していて、ちょっとした異世界に来たような気分になった。
温度は100度近くだというから、人を突き落としたら間違いなく殺人沙汰になるだろう。
最後までお読みくださりありがとうございました!
旅日記は釧路編に続きます!